人生百年、出版も百年。
百年書房
Fm yokohama
「Grand Senior Salon」

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Grand Senior Salonとは?

この番組は「いくつになったって、考えることは(そして、喋ることは)自由だ」のスローガンの下、80歳以上のグランドシニアによる、グランドシニアのために制作された、ポジティブな井戸端会議です。

FMヨコハマ 毎週火曜日午前5:15〜5:45
※地域外の方はradikoで聴くことができます。

ゲスト紹介guests

第1〜2回(2021年8月3、10日放送)
木村利人さん(早稲田大学名誉教授)
第3回(8月17日放送)
三遊亭遊三師匠(落語家)
第4回(8月24日放送)
苅田吉夫さん(元宮内庁式部官長)
第5回(8月31日放送)
坂本博士さん(声楽家)
第6〜7回(9月7、14日放送)
樋口恵子さん(評論家)
第8回(9月21日放送)
金子勝彦さん(スポーツアナウンサー)
第9回(9月28日放送)
相田洋さん(元NHKディレクター)
第10〜11回(10月5、12日放送)
高木ブーさん(コメディアン)
第12回(10月19日放送)
道場六三郎さん(料理人)予定
第13回(10月26日放送)
三浦雄一郎さん(プロスキーヤー)予定
第14〜15回(11月2日、9日放送)
黒沼ユリ子さん(ヴァイオリニスト)予定
第16回(11月16日放送)
東海林のり子さん(芸能リポーター)予定

ゲスト◎木村利人さん(早稲田大学名誉教授)

第1回のゲストは早稲田大学名誉教授の木村利人さんです。ご専門はバイオエシックス(生命倫理学)。難しいご専門を簡単に言うと「自分の命は自分で決めなさい」とおっしゃる。命の価値、大事さを改めて見つめる機会を世界に広めた方です。もっと分かりやすくご紹介すると、ヒット曲「幸せなら手をたたこう」の作詞家でいらっしゃいます。

実はね、現在では楽しい場面で歌われることも多いあの歌の背景には、苦しい、悲しい思い出があるんですよ。それは、戦争なんです。

戦争…

僕が訪れたフィリピンの現地は1941年に日本が上陸した土地で、ご家族を失ったり大変な事態になっていた。現地に行くと雰囲気がなんというか…日本人の僕が睨みつけられるわけです。当時15歳だった僕は山梨に疎開していて、まさか日本が戦争でそんなことをやっているなんて思わなかった。そこでそういう事実を聞かされて苦しくなっちゃってね…そしたら現地の友人が「リヒト、君がやったわけじゃないし、戦争だったんだからやむを得ないところもあった。われわれは未来を見つめて共に生きようじゃないか」って言ってくれたんです。たまたまそのときに読んでいた聖書の中に「世界の民よ、手をたたき、神を褒め称えよう」っていう言葉があって、この一節からとって現地の民謡に詩をつけました。「お互いに愛し合って罪を許し合って生きていこう」と、そういう歌なんです。これがね、ちょうどオリンピックの、高度成長期のはじまりですよね。坂本九ちゃんが歌ってくれて、そういう社会的な動向ともマッチして一気に広まったんですね。

それでは「幸せなら手をたたこう」を聴いてみましょうよ。

EP:幸せなら手をたたこう

1964年5月に東芝から発売されたEPレコードのジャケット写真。

その後の木村さんの人生を大きく変えることにもなった曲ですね。

この歌は僕の出発点です。

「幸せなら手をたたこう」の「幸せ」って何でしょう? ただ単に元気で長生きすることではないですよね?

ないですね。自分たちが与えられた命に対して、責任を持って生きていこうという、主人公は自分であるというテーマを歌の中に込めてあるし、それが幸せの基本なんだと思います。他人任せにしない、自分の命―ということです。

現在87歳の木村さんですが、80歳を過ぎて何か変わったことはありますか?

個人差があるのでしょうが、日常的な生活の中で「もっと知りたい」ということがますます増えてきましたね。ブラウニングというイギリスの詩人がいるのですが、若い人に対してね「私と一緒に年を取れ。いいことはこれからやってくる」っていう詩があるんです。僕自身ももっといいことはこれからやってくるという気持ちで毎日生活しています。

グランドシニアの言葉

ブラウニングというイギリスの詩人がいるのですが、若い人に対してね「私と一緒に年を取れ。いいことはこれからやってくる」という詩があるんです。僕自身ももっといいことはこれからやってくるという気持ちで毎日生活しています。木村利人さん(第1回放送)

ダーウィンの進化論的発想で、強い者が残って社会的な勝利者になる…適者生存=サバイバル・オブ・ザ・フィッテストという今までの考え方をひっくり返してね、サバイバル・オブ・ザ・ラッキストっていう発想にしていく必要があると思うんです。遺伝学者の木村資生さんは「生存に有利でも不利でもない中立的な変化が大事だ」と世界で初めて言った人です。我々は高齢者になって本当にラッキーだということです。こんな考え方が平和や幸せ、そして未来への希望につながると思うんですよ。木村利人さん(第2回放送)

運動は日常生活。寄席はリハビリです(笑)。三遊亭遊三師匠(第3回放送)

(酒飲みの噺がうまいと言われて)昔からね、お酒を飲まない人のほうが酔っ払いの真似とか、噺はうまかったようですよ。やっぱり観察してるんでしょう。飲む人はそこに気が付かない。三遊亭遊三師匠(第3回放送)

声の大きな人は長生きすると聞いています。三遊亭遊三師匠(第3回放送)

マスター小林の独り言

番組のBGMで流れているのは、グリーグ作曲ペール・ギュントの中の「朝」という曲です。私はこの曲に思い出があります。それは今から60年以上も昔、アナウンサーとして採用された局で、宿直明けの新人が朝のラジオ放送開始時間―たぶん5時だったと思いますが―その日の番組紹介をかねて自由に10分ほど話す時間がありました。そのときに流れていたのがこの曲です。素晴らしい曲ですが、当時は時間を埋める話題作りに精一杯で、とても音楽を楽しむ余裕はありませんでした。その曲をいま、また新人のつもりでかけています。初心忘れず、です。(第1回放送)

年をとってから何か始めるのには、きっかけが必要かもしれません。私が素人落語を始めたのも、三遊亭遊三師匠の後押しがなければ実現しませんでした。私が参加させてもらった落語研究会は、落語の楽しみ方、ウラ話などを面白おかしく聞かせてもらう会だと思っていました。
ところがですよ。初めて参加した日に師匠が私のために「子褒め」という落語を演じてくれて、これを私に覚えなさいと言うんです。私が苦笑いして聞き流すと、翌月もまた同じものを演じてくれるんです。これでは師匠から新しい話を聞こうと集まっている古いメンバーにとっては迷惑な話です。
仕方ない。老骨に鞭打って覚えよう―と覚悟を決めて3カ月後、なんとか覚えて高座にのぼりました。
この会で私の余生が一変しました。第1に「物を覚える」という年寄りの苦行が始まったのです。
第2に物をみる視点が広がりました。第3に舞台にのぼるというときめきを何年ぶりかに味わいました。
4番目は若者との交流です。もう年をとってなんていられません。皆さんも何か新しいことに、ぜひ挑戦してみてください。(第3回放送)

小林昌彦の本books

小林昌彦略歴

小林昌彦略歴profile

Grand Senior Salonマスター。フリージャーナリスト、作家。元毎日放送キャスター。現役時代はニューヨーク・ワシントン特派員を務めた経験もある。日本ペンクラブ会員。主な著書に『国崩し』(イースト・プレス)、『じゃぽん奴隷異聞』(文芸社)、『新浅草物語』(百年書房)などがある。