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連載対談 第4回「自分史をつくったことで、とてもすっきりしました」

深井さんは女子円盤投げ元日本記録保持者でいらっしゃいます。現役時代のこと、家族のこと、仕事のこと、そして老後…。深井さんのすべてを(?)つめこんだ『わたしの事典』完成から約二カ月、本づくりの感想、まわりの反応などなど、じっくりと聞かせていただきました。(聞き手 百年書房・藤田)

深井てる子さん

1947(昭和22)年、埼玉県草加市生まれ。陸上競技で活躍したお父さんの影響で、高校時代より円盤投げ選手として活躍。1971(昭和46)年には51M28の日本新記録を樹立した。ご家族は夫と二女。

「歩」深井てる子著

『わたしの事典 歩』のカバー。「歩」の文字は字てがみ(一文字書道)を習う、深井さんの作。写真は現役時代、日本新記録を達成したときのものを使用しています。

再チャレンジ、自分史作り

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まず、自分史を作ろうと思ったきっかけから教えてください。
深井
競技をしていた現役時代に、自分がこなしたトレーニングや食事など、詳しくメモをとる習慣がありました。いつか後進の役にたつんじゃないかと思ったのね。それが引退して陸上競技からは距離をとることになり、日々仕事に追われそのままになってしまいました。
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なるほど。
深井
そのノートをもとに、陸上競技時代を中心にして自分史のようなものを作ろうとしたことが一度あります。もう十年くらい前の話ですが…挫折しました(笑)。
―――
もとになるノートがあったのに、ですか?
深井
そう、あったにもかかわらず(笑)。途中で嫌になっちゃって、ノートを全部処分しちゃったの。
―――
あらら…もったいないです…。
深井
やはり一人で書こうとすると大変で、その挫折したことが頭のどこかにあったんでしょうね。文化センターで「自分史講座」があるのを知って、再チャレンジしてみようと思いました。ノートはもうないけれども、記憶をもとに(笑)。
―――
深井さん、いざ書き始めるとものすごい勢いでした。すべての原稿を実質2週間くらいで書き上げてしまわれました。
深井
そう、年末年始にね。何か溜まっていたものがあったのでしょう。
―――
いや本当にすごい勢いで…。原稿を書くということに関しては、ほとんど苦労されていなかった印象があります。
深井
あのね、書きやすかったのよ。藤田さんが勧めてくれた書き方というか体裁というか。テーマがあって、ひとつひとつが短い(註・原稿一本につき800字程度)から一気に書けた。私も書きやすかったし、本をあげた人にもとっても評判がいいのよ、手軽で読みやすいって。ふつうの自分史だとちょっと重々しいじゃない。
―――
ありがとうございます。元トップスポーツ選手ならではの、集中力をとても感じることができて、こちらも勉強になりました。

海を渡った『わたしの事典』

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後進のための自分史、という以前の目的とは少し趣きがことなったとも思いますが、「あとがき」にもあるように、頭に思い描いた第一の読者はお二人の娘さんですよね?
深井
そう、娘たち。おまけで旦那(笑)。
―――
深井さんに「誰にむけての本ですか?」と質問したことがあるのですが、そのときに「いつか孫やひ孫が、スポーツやるかもしれないでしょ」という答えがあったのが、非常に印象的でした。
深井
そう、まだ見ぬ子孫も意識したの(笑)。
―――
ご家族の皆さんの感想は?
深井
特にはなかったです(笑)。
―――
ご主人の誕生日に、できたてのご本をプレゼントする、というお話でした。
深井
本が届いた翌日が夫の誕生日でしたので、誕生日プレゼントにしました。やっぱり恥ずかしいんじゃないかしら? 自分の写真も使われちゃってるし(笑)。でも、自分の友達なんかにも本を渡したりしているから、嫌ということもないようです。
―――
それは何よりです。娘さんは?
深井
海外で働いている次女が一時帰国してね、「お母さん、自分のやりたいことを思う通りに、本当にやってきたんだね」と言ってくれました。
―――
いい言葉ですね。
深井
しみじみと言ってましたね。仕事場はアフリカなんですが、あちらに戻るときに何冊か持っていきましたよ。
―――
深井さんのご本はなんと、海を渡ってアフリカ大陸に上陸したんですね(笑)。
深井
そう(笑)。

おわりに(娘たちへ)

「おわりに」では、深井さんが一番の読者として頭においたという娘さんたちへのメッセージが書かれています。さらに、かつて日本一に輝いた黄金の手を原寸大で印刷。本当に大きな手です。

周囲の反応は?

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ご家族以外の方の反応はどうでしょう? 。
深井
70部作ってほとんど配ったんですけど、いろいろ反応があって面白いわね。手紙に長い感想を書いて送ってくれる人が多くて驚いたし、本なんて読まないのか(笑)そのままの人もいるし。
―――
本は性質上、感想をあまり期待しない方がいい面もあります…のんびりとお待ちください。感想の手紙を私も拝見したのですが、たくさん来ていましたね。
深井
「深井さん、こんなこと思ってたんだ」とか「だから日本記録出せたんだ」っていう感想がありました。まわりが思っていた私と実際の私との距離が、何十年の時を経て少し縮まったのかなと。
―――
たくましいエピソードの連続で、まわりの方は驚かれるのだと思います。そして、深井さんのご本が、新聞で取り上げられました。
毎日新聞で紹介された記事はこちら
深井
記者さんが古い知り合いでね、紹介してくれました。
―――
ずいぶんと大きな扱いでした。
深井
そうなの。知り合いから電話かかってきて「自分にもくれ」なんて言われて…。
―――
うれしい悲鳴だと思います。
深井
紹介されたことで、伝えていなかったまわりの人にも知られてしまって、本が足りないくらい…。

自分史作りをふりかえって

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ご本が完成して、少し時間がたちました。
深井
今はやりの「断捨離」じゃないけど、自分の写真や新聞の切り抜きをいろいろと処分しようと思っていました。今回、一冊の本にまとまったことで、ババーッと捨てちゃおうかなと。
―――
深井さん、本当に捨ててしまいそうです…。
深井
もうずいぶんすっきりさせましたよ。
―――
あらら。
深井
だって家族の者はそういうの捨てづらいじゃない? 自分でさっぱりとしておきたいし、そのために本を作ったのよ。
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今回の本作りを総括して、いかがでしたか?
深井
ちょっと書きすぎちゃったんじゃないかと思うくらいね。これ、自分史を書いたからだと思うんですけど、次から次へと連想ゲームのように昔のことを思い出せたっていうのはあるかな。いろいろと発見というか再発見もあって。気持ちとしてとてもすっきりしました。
―――
今回作られた『わたしの事典』は、深井さんにとってどういう「もの」になりましたか?
深井
うーん…難しい質問ね…。(しばらく考えてから)「家宝」と言いたいところだけど、まずは捨てられずに取っておいてもらわないといけないから「家宝希望」ということにしてください(笑)。
―――
末永くご家族に大切にされることと思います。このたびはありがとうございました。
深井
こちらこそ、ありがとうございました。
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