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インタビュー アフターケア相談所ゆずりは所長 高橋亜美さん

児童養護施設の少年少女たちは、18歳になると施設を出なくてはなりません。社会に出た後の彼らをケアする活動をされているアフターケア相談所「ゆずりは」所長・高橋亜美さん。施設の少年少女たちの声なき声を高橋さんが代弁した詩集絵本『はじめてはいたくつした』が完成しました。ひとりでも多くの人に「まずは知ってもらいたい」—それが小さな文庫の願いです。

高橋亜美さん

1973年生まれ。日本社会事業大学社会福祉学部卒業。自立支援ホームのスタッフを経て、2011年よりアフターケア相談所「ゆずりは」所長。

思いは言葉になり、詩になった

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このたびは『はじめてはいたくつした』の完成、おめでとうございます。
高橋
ありがとうございます。素敵な文庫を作っていただきました。
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高橋さんとはじめてお会いした経緯を説明しますと、ある会合で高橋さんが講話をされていたんですね。そこで高橋さんが、児童養護施設にいる、かつていた少年少女たちの声を代弁した切実な詩を、情感たっぷりにを朗読されていたのが最初です。高橋さんはこういった詩をたくさんお書きになっていると思いますが、どのくらいの数があるんですか?
高橋
実際に活字になったり、詩のかたちになっているものは数十篇だと思いますが、まだかたちになっていない、メモ書きのようなものだと…数えきれないくらいあります。
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そんなにたくさんあるんですか?
高橋
もともと代弁するために詩を書いたわけではなく、何というか…書かずにはいられなかったというのが正直なところです。彼らの話の中には本当にどこにも行き場のない重い話も多くあって、手帳に書き記すことで聞き手である私が精神のバランスをとっているところもあるんだと思います。
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詩は少年少女たちの声であると同時に、高橋さんの詩でもあるのですね。だから、高橋さん自身の朗読が聞く側に響いてくる。先ほどの講話の話に戻りますと、開場は唾も飲み込めない雰囲気というか、シーンとなって…。
高橋
詩の朗読は感情移入するところがあって…少し恥ずかしいですね。
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講話が終わった後の懇談会では、ご自身の活動に対して寄付を募っていらした。その場にいた誰もが「これは寄付したいな。しなくてはいけないな」という雰囲気がすごくあったんですね。その場で寄付するわけではないのがネックなのか…残念なことに、会場を出るとすぐに忘れてしまう。一瞬の思いと行動には壁があると言いますか。
高橋
関心を持ってもらう、賛同してもらう、支援してもらう—さらには継続的に支援してもらうというような段階があるんだと思います。そのひとつひとつに乗り越えてもらうハードルがあることを痛感しています。
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せっかくの「これは寄付したいな」という思いを、その場限りのものではなく持ち帰ってもらうには、本という形はいいと思います。無料で配るパンフレットだと簡単に捨てられてしまうこともありますが…500円、自腹を切って買った本なら大切にしてもらえます。もしかすると、他の誰かにも読んでもらえるかもしれない。

文庫を鞄につめこんで

高橋
おかげさまで文庫の評判は上々です。講演会などで全国をまわる機会には、『はじめてはいたくつした』を鞄に入れて持ち歩いています。小さくて薄い文庫なので持ち歩きやすい(笑)。ひとりで何冊も買ってくださる方もいるんですよ。
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そういう意味では『はじめてはいたくつした』はお金を出して買っていただくパンフレット的な役割も担いますね。
高橋
大切にしてもらえる、という部分では本当にそう思います。いままでに出した本も何冊かあるのですが、価格も高めで専門書のような雰囲気もあってハードルが高かった。『はじめてはいたくつした』はすぐに読めて分かりやすいので、買ってもらいやすいんですね。また、「ゆずりは」では施設を巣立った人たちでジャムを作り、販売しています。
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「ゆずりは」さんのホームページではジャムと本のギフトセットができました。
高橋
本ができたことで相乗効果もあるんですね。自分たちの活動を目に見える形にする、ということにはすごく興味があるので、これから年に1回でも定期的に本を出せたらいいなと思っています。
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継続的にお役に立てればと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

※『はじめてはいたくつした』の定価は500円。本の収益(1部100円程度)は施設を巣だった子どもたちの高卒認定等の資格取得や進学費用のための「あおいとり基金」に寄付されます。
※『子どもの未来をあきらめない 施設で育った子どもの自立支援』(明石書店)『愛されなかった私たちが愛を知るまで—傷ついた子ども時代を乗り越え生きる若者たち』(かもがわ出版)など。

■高橋さんの詩の朗読がNHKラジオで放送されました(2017.8.31放送。~10.31オンデマンド視聴ができます)。


作家・安部譲二さんから「話すだけ、自分史」を検討中の方へ『はじめてはいたくつした』刊行を記念して、田原町のブックストアREADIN' WRITIN'でトークイベントが開催されます。困難に直面した少年少女たちの現状を高橋さんが語り、私たちが普段はあまり意識することのない「あたり前の日常」を改めて考えます。

日時:8/30(水)19:00〜21:00(開場18:30〜)
場所:READIN' WRITIN' TAWARAMACHI BOOKSTORE
(東京都台東区寿2-4-7 東京メトロ銀座線「田原町」駅1番出口徒歩2分)
入場料:1,000円(ワンドリンクつき)
お申込み:こちらより承ります(お問い合わせはTEL03-6666-9594)

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