











『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)で知られる、翻訳家・作家の宮崎伸治さん。出版社とのやり取りで疲弊した(?)宮崎さんにとって、自費出版という選択肢は「全然アリだった」とのこと。今回、弊社での刊行にいたった経緯とその後をお聞きしました。(2023年4月)

宮崎さんは7か国語を操る多言語使いですが、本業の翻訳は英語がご専門。(写真・三五館シンシャ提供)
宮崎伸治(みやざき・しんじ)さん
青山学院大学国際政経学部卒、英シェフィールド大学大学院言語学研究科修了、金沢工業大学大学院工学研究科修了、慶應義塾大学文学部卒、英ロンドン大学哲学部卒および神学部サーティフィケート課程修了、日本大学法学部および商学部卒。著訳書は約60冊を超える。著書に『出版翻訳家なんてなるんじゃなかった日記』(三五館シンシャ)、『自分を変える! 大人の学び方大全」(世界文化社)、『時間錬金術』(ディスカヴァートゥエンティワン)、訳書に『7つの習慣 最優先事項』(キングペアー出版)など。文筆活動以外でも講演で全国を飛び回っている。
出さずには死ねない
- ―――
- 本日はよろしくお願いします。まず、翻訳家・作家として60冊以上も本を出されている宮崎さんが、『聖書英語なぞるだけ』を自費出版しようと思われた経緯を教えてください。
- ―――
- こちらのノートが実際に書き写したノートですね。宮崎さんはこういうノートや単語帳を何百冊もお持ちです。
- 宮崎
- やはり語学というのは実際に手を使わないと単語のスペルを覚えられません。また、自分の書くアルファベットの文字自体も美しいものになりますので、書き写す、という行為は言語学習にとってたいへん優れた方法だと思っています。私は英語だけではなく多くの言語を勉強していまして、「聖書なぞるだけ」も実はフランス語版を出せたら思っていたのです。
- ―――
- 宮崎さんは多言語学習をされているんですよね。英語、フランス語以外ですと…
- 宮崎
- ドイツ語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、中国語の7か国語ですね。
- ―――
- すごい…。多言語学習については後ほどお聞きするとして…フランス語版の企画の話をお願いします。
- 宮崎
- いくつか出版社をまわりました。すると「英語版なら出してもいい」「英語が売れたらフランス語も出そう」と言ってくれたところがあって、いったん企画が通ったのですが…ひっくり返ってしまった。
- ―――
- はじめから「聖書英語」ではなかったんですね。
- 宮崎
- そうなんです。ただ、もちろん英語でも書き写して勉強していましたから大歓迎でしたが…頓挫してしまい、他にもいくつかの出版社にあたりましたが色よい返事がない。
- ―――
- それなら自費で、という経緯だったんですね。
- 宮崎
- これは絶対にいい本だから、出さないという選択肢は私の中にはありませんでした。自費でだって構わない、大袈裟に言えば出さずには死ねないくらいの思いでした。そもそも私は初めて出した本が自費出版で、今回が3回目になります。大切な本なら、売れるとか売れないとかの話はもう関係ないんです。

紆余曲折を経て無事完成した『聖書英語なぞるだけ』。

宮崎さんの名を世に知らしめた、名著。翻訳家による面白くも恐ろしい…出版ドキュメント。興味のある方は是非。
1店舗で70冊を完売
- ―――
- このたびは完成おめでとうございます。こちらの本は、宮崎さんのツテでキリスト教系の書店さんで置かれているそうです。
- 宮崎
- はい。ある書店さんでは1店舗で70冊ほど売れたところもあります。クリスマスプレゼント用によく売れたようです。
- ―――
- 1店舗で70冊!
- 宮崎
- おかげさまで…出来上がった本を見た、ある出版社さんからは企画出版として作り直さないかというお話もいただいています。
- ―――
- 個人的に作った本が足がかりになって、商業出版になる。素敵なお話です。今回の企画が無事進むことを祈っています。最後に、宮崎さんの多言語学習について簡単にお話を聞かせてください。いったいどんな毎日を送って勉強されているのですか?
多言語学習への情熱
- 宮崎
- 毎日多言語学習しているわけではありません(笑)。現在はスペイン語を中心に勉強しています。
- ―――
- 今日は中国語、明日はドイツ語…というわけではないのですね。
- 宮崎
- 違います。ある期間は徹底的にある言語を勉強します。他の言語は少々忘れたって構わない。次に勉強し始めたときには前回のスタートラインよりはステップアップしているのですから。
- ―――
- ちょっと想像しづらいですが、そうかもしれません…。それにしても、どのくらいの時間を勉強にあてているんですか?
- 宮崎
- 今日もマンツーマンでスペイン語のレッスンに行ってきたところです。現在は、定期的な連載が3本あって、週に2日アルバイトに出かけています。それ以外の時間は、基本的に語学学習にあてています。
- ―――
- すごい…ほとんどの時間、勉強しているわけですね…。宮崎さんの多言語学習への意欲、情熱はどこからくるのでしょうか?
- 宮崎
- 大作家の原書に触れることができるからです。たとえば、ドイツ語でカフカを読む、イタリア語でダンテの『神曲』を読むことだってできる。これはすばらしいことですよ。
- ―――
- 確かに…そうかもしれません。その語学学習に最適なのが…
- 宮崎
- 書き写すことです(ニッコリ)。
- ―――
- すばらしいです。ますますのご活躍を祈念しております。本日はありがとうございました。

Campusノートにびっしり書かれた聖書英語。こちらは『聖書英語~』の元原稿ではなく、純粋に宮崎さんが学習した跡。

『聖書英語なぞるだけ』の中身。宮崎さんがノートに書いて学習したのと同様の効果が得られる(?)仕組み。

常に持ち歩く単語帳。現在はスペイン語を重点的に学習しているそう。Asombroso!