










「本にまとめる自分史入門」開講に先立ち、毎日文化センター(竹橋)でモニター講座を実施しました。制作期間半年、女性3人の合作本『わたしの事典』(自伝的事典)が完成。納本当日の興奮冷めやらぬ中、3人にお話を伺いました。

完成した本を手にした瞬間の、3人の様子。嬉しくもあり、ちょっと照れくさくもあり…。追加注文して各50部ずつ納本されました。さて、出来栄えはいかがでしょうか?
- ―――
- このたびは本の完成おめでとうございます。まず講座に参加しようと思ったきっかけを聞かせてください。
- 山口
- 正直、文章を書く講座なのか、本を作る講座なのか、はたまた和綴じなどで本を作る講座なのか、よくわからないまま申し込んだんですけど、私はどれも好きなことだったので深く考えませんでした(笑)。
- 井堀
- そしたら、作文書いて本にする講座だった(笑)。
- 板倉
- 私はね、山口さんと違って、書くのは苦手だったけど(笑)。内容を読んだときにやっぱり、何ていうのかな、ひとつ子育てを終えて、ある意味人生を終えた人たち? 私も含めて3人は、いろんなことがあったんだなって、読んでとっても楽しい。味わい深いっていうのかな。思っていたよりもずっと本音が出て、それから多岐にわたっているじゃないですか、だいたいみんな、小中高と学生時代からはじまって、経験したこと全般にわたって書かれているけど、なかなかいいなと思いました。
- 井堀
- うんうん。
- 板倉
- できる前の過程でね、家に帰って読んでいるときに考えさせられることがすごく多かった。
- 井堀
- 山口さんの作文はうっとりするというか、ほろりさせられたというか、そんな書き方。「坊主」(というタイトルの原稿があった・註)は良かったわよね。
- 板倉
- ねぇ。
- 山口
- あれは喫茶店で急いでサーッと書いたんですけど(笑)。
- 井堀
- でもよくできてた。あれを喫茶店で書いたなんてねぇ(笑)。うらやましい!
- 山口
- 人に話すような感じでワーッと書いちゃうの。
- 板倉
- 書くのが楽しいのよね。
- 井堀
- 好きだから楽しいし、うまく書けてる。私の場合、息子のことで苦労したから、読んでいてすごく共感するっていうか、よーくわかるし、板倉さんのちょっと冷めた目?っていうのもいいなぁと思った。私は2人のようにできなかったら、結局。ただ、掃除して洗濯してご飯を作って終わり。という不思議な結婚生活だったから。
- ―――
- 井堀さんは、直前に原稿の差し替えがたくさんありました(笑)。
- 井堀
- すみません(笑)。ちょっと過激だったところを訂正させていただきました。
- 山口
- この本をね、だれにも配らずに、自分だけが持つ本にするのならば、中身もまた全然違ったものになったりしますもんね(笑)。
- 井堀
- そう(笑)。
- ―――
- 板倉さんは、息子さんに差し上げる本ということで、あまり砕けた話は割愛したというところはありませんでしたか?
- 板倉
- 息子にもね、いまあげようというわけでもないんですよ。
- 井堀
- あら、そうなの?
- 板倉
- 息子だっていま、結婚したばかりで新しい生活を築こうとしているときにね、こんなお母さんの本を渡してもね…なんかもっと年をとってからゆっくり読んでもらった方がいい。
- 井堀
- そうか、だから板倉さんの作文は少し記録的なんだ…。
- 板倉
- そう。後からわかりやすいようにね。はじめに主人にだけは渡してね、他に人に見せてもおかしくないかしら?って聞いてから渡そうかなと思ってるの。
- 井堀
- 慎重派だ(笑)。
- 山口
- 私も主人に見てもらってますよ。誰も傷つけないように、ということは配慮しましたね。配る範囲を考えたときに、本当に自分の身近な人だけにしか配らないので、これだけは注意して。
- 板倉
- 何人かはね、そんなに気遣いなく「あなたらしいわね」って言ってくれる友達がいて、その人たちだけには駆け引きなしで渡そうかなと思ってるの。で、主人には「何か気に障った?」って聞いてみるつもりで、「いいんじゃない」と言われたら、それはそれで嬉しいかな。私の身内はもういないから、主人の身内に配ってどうかしらって聞こうと思うの。
- ―――
- みなさん、配り方が手堅いですね。
- 板倉
- いまじゃなくて、徐々に配っていくの。
- 山口
- かえって全然、離れている人に先に渡したりしてね。
- 井堀
- それはいいかもしれない。
- 板倉
- でも、ちょっと気恥ずかしいというか複雑かも。あげるにしてもね、時を待ってね、あげようかと。
- 井堀
- 今回の原稿で、筆がすべってというか書きすぎちゃってボツにした原稿がたくさんあるじゃないですか…そういうのをまとめてね、個人編としてもう一冊作りたいな、なんて思ったりもしているの。
- 板倉
- なるほど。
- 井堀
- 自分でも書けたっていうか、書いたっていう結果がうれしくってね、私の場合。
- 山口
- ボツといえば私の「後書き」ね、最初はもっと堅いのを書いたんですよ。どうしてここ(毎日文化センター)に来たのか、ということをね。そしたら重くなってね。去年の夏に、本当に私が尊敬していた女性が癌で亡くなったんですけど、そのときに「あぁ、人間ってこんなに簡単に死んじゃうんだ」って思って。とても華やかで教養もあって、本当に素晴らしい女性だったんですけど…そんなことはお構いなしに神様はこの人の人生をシャットアウトしちゃうんだっていう…ショックで、いまだに傷はいえないんですけど、私、何か残さなくちゃって思ったんです。考えてみたら私、何も残ってないわと思って。
- 板倉
- そんなことないわよ。
- 井堀
- 山口さんらしくない。
- 山口
- 唯一ね、子どもだけが残ってますけど、もう離れちゃったわけだから。どうしようって…毎日新聞開いていたらこの講座の広告が目に飛び込んできて「あら、こんなことがあるの」って、どんなものでもいいから、自分の名前が残って本ができるんだったらいいなぁと思って。ふらふら〜と来たわけですけど(笑)。だからそれが本当は理由なんですよ。何か残したかった。どんなものでもいいから。彼女に捧げるつもりで、こんなことがあったのよこんなことがあったのよって、私の人生こうだったのよって半分は彼女に話すようなつもりで書けたらいいなぁと思って。
- ―――
- それで、彼女に話すように書けましたか?
- 山口
- ちょっと違いましたけど(笑)。もっと深い話になっていくから。深刻になりすぎてしまうかもしれない。だから、書いても自分でボツにしてしまったのもありますよ、あぁダメだダメだと。頭の中で書くんですけど、私の場合は。
- 板倉
- 山口さんの話は軽妙だもんね。
- 山口
- そう、けっきょく少し軽いタッチになった(笑)。深いところまで書けなかった、良くも悪くも。これが反省点な気もするし、これで良かったという気もしています。
- ―――
- 山口さんにしても、井堀さんにしても、講座で作文を発表するときに、他の2人を楽しませようとしすぎてしまったところもあるのではないですか?
- 井堀
- 楽しませようというよりも、足を引っ張らないようにと気をつけました。下品にしないように(笑)。
- 一同
- (笑)。
- ―――
- テーマというか言葉に縛られて書きづらかったということはありませんでしたか?
- 山口
- でも、だから書きやすかったっていうのもある。
- 井堀
- そうね。自由よりも不自由の方が書きやすいっていうのもあるわね。
- 山口
- 「これで書きなさい」っていうのをしっかり出してもらった方がいいっていうね。
- ―――
- 苦労したところを教えてください。
- 井堀
- 書き直し(笑)。本になることを意識せずに書いてしまったところですね。このままじゃ旦那に見せられないから(笑)。
- 板倉
- 私は全体的に難産だった…。
- 山口
- 私はいけないな、とは思ったんですけど、みんなみたいによく考えないで書いてしまったというか、苦労しなかったというか…。
- 一同
- (笑)。
- 板倉
- うらやましいわね(笑)。
- 山口
- うまく書こうとかっていうのではなく、もっと軽く考えていたというか。自分のエピソードをぽつんぽつんと拾い上げて、話すような感じでやった方がいいかなっていうのがあって。文章を推敲するとかっていうのではなくって、世間話感覚ですかね。
- ―――
- いま、山口さんがおっしゃった話が、実は「本にまとめる自分史」のコンセプトに一番近いのかもしれません。
- 井堀
- しらなかった…早く言ってくださいよ(笑)。
- 板倉
- 性格もあるしね。どんなエピソードというかハプニングがあっても、楽しく取るか深刻に取るかっていうね。私なんかはどちらかというと深刻に取る方だから、山口さんの作文はとても新鮮でいいなぁ、と。楽しかったわよ、豪快でねぇ。主人に井堀さんの作文の話をしたらね、「これ、本当の話か?」って。実際のところ、どうですか(笑)?
- 井堀
- 私の場合、ぜんぶ本当。
- 山口
- そうか、あまり過激だとフィクションに思われる場合もあるのか。私もぜんぶ本当ですよ。
- 板倉
- 主人に伝えておきます(笑)。
- 山口
- 起承転結ではないけれども、盛り上げるというか、作文にすると複雑な話も妙にまとまるところはありますよね。
- ―――
- 本当の話かフィクションかって境い目は実は微妙で、たとえば3人とも30年前の話とか50年前の話とかを作文したわけですけれども、そんなに昔の話になると、何がフィクションで何か本当の話なのか、その境界線があいまいになってくるということはあると思います。要するに、自分がどう思っているのかが大事というか…。
- 井堀
- そうね。少なくとも自分が思っていること、思ったこと、という思い込み? これは正直に書いたつもり。
- 山口
- 私もそうです。
- 板倉
- 私だけ真面目に書きすぎたかもしれない(笑)。
- 山口
- 人って…特に女の人は自分の過去を美化するじゃないですか。
- 井堀
- あぁ、そうね。
- 板倉
- なるほどね、そうかもね。鋭いかもしれない。
- 山口
- 自分でもそう思うし。もしかしたら美化しちゃってるかもしれないと思う。思うけれど…。
- 板倉
- それを楽天的にとらえるか悲観的にとらえるかで、美化のし方が違うもんね。
- 井堀
- 美化ね…。
- 山口
- 本当に本当のドラマは書けないもん(笑)。
- 一同
- (笑)。
- 井堀
- そういう意味では板倉さんは真面目に、事実に忠実に?書こうとしすぎたのかもしれない。
- 板倉
- 性格ね(笑)。間違っちゃいけないというか、つきつめちゃうというか。
- 井堀
- 私はそこまでいけないから、逆につめなかったな。思うままに書いて、後から書き直しをしてしまった(笑)。
- 山口
- ちょっともったいないですけど。
- 井堀
- すみません(笑)。
- ―――
- 半年かけて、ようやく本が完成しました
- 山口
- とっても嬉しい。ここに自分の名前があって。
- 板倉
- ね。でもちょっと恥ずかしいの、それが。嬉し恥ずかし(笑)。
- 井堀
- 板倉さんが恥ずかしかったら、私はどうなるの(笑)。
- 板倉
- こんなに綺麗な本になって…。
- 山口
- 井堀さんの「後書き」にもありましたけれども、これで終わってしまうのがとてもさびしいです。